建物の周囲に美観のための植木がある。
まるで、この範囲までが敷地だと無言の主張をしている。
そこに1輪の花が咲いている。
誰もが知っている花だった。
いつも枝と葉っぱだけが好きなように伸び生え、
緑の一面しか見せてくなかった植木。
手入れをする立場から言わせれば、
「意外な一面を見せてくれた」ものだ。
お花って、
咲かなければ、お店に並べられないのよ。
今では誰が言っていたか分からない、有名な言葉である。
本当にそうだった。
いつも素通りする場所が、たった1輪の花が咲いたことで、
視線が止まる場所になった。
咲くまでに、栄養をためたり、切られないように潜めていたのだろう。
周りの緑に囲まれながら咲いた一際赤い1輪の花は、
称賛を浴びるかのように、太陽に向かって花びらを大きく広げていた。